000

3/6
前へ
/35ページ
次へ
アリスが目をさますと、天井が見えた。 「…保健室?」 白いカーテンに、白い天井、白い壁。 ベッドも枕やシーツ、掛けられた布団まで白い。 まさに、保健室と言った感じの部屋だ。 「起きたかい?」と声がすると、保健室の女教師が、カーテンを開けた。 この先生は、見た目こそ若いが、もう50過ぎである。 「はい、大丈夫です。」 「体育の前に、顔面ボールで気絶だなんて、珍しい子だねえ。」 保健室の女教師は、笑いながらアリスに言った。 「…私、なぜ保健室に?」 「ああ、ボールぶつけた本人が、あんたを抱えて、慌てて運んだんだよ。」 「そうですか。」 アリスは、薄れていく意識の中、ボールを顔面に受けた時の事を思い出していた。 「危ない!!」 その声が、耳に届いて振り向いた瞬間、自分の目の前には、バスケットボールと声を掛けた人物の姿、ぶつかってから倒れて意識を手放す時に、聞こえた自分を呼ぶ声…。 「周防恋…。」 「あら、周防くんが連れてきたの、知ってたの?」 「いえ、記憶を辿って、なんとなく…。」 「さすが、森下さんね。気絶してたなんて思えないわ。」 「どうも。」 そんな会話をしながら、アリスは違和感を感じた。 「先生、私の眼鏡は?髪も…。」 トレードマークである、黒縁眼鏡とおさげ髪をしていなかったのだ。 「ああ、眼鏡は壊れてしまったみいでね、髪は寝かせるのに、私がほどいてしまったのだけど…。」 「そうですか。」 保健室の女教師は、壊れた眼鏡と髪ゴムをアリスに差し出したのと同時に、授業終了のチャイムが鳴った…と、同時に保健室のドアが勢いよく開いた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加