其ノ二 俘の噺

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※  それからも一日が非常に長い日々は続いた。天井の染みを数え終えると、今度は壁や床にまで染みを求める始末だ。ラマダに何度も指摘されたことだが、釈放される頃には癖になってなければよいが。  この数日でいくつか分かったことがある。頼めば椀に一杯の飲み水を自由にもらえること、それに一言添えれば白湯にしてもらえること。厠は始めはどうすればよいのか分からなかったが、どうやら隅のほうにある桶がその代わりだと言う。ちり紙に関しては、これもまた頼めばもらえる。初めてこの桶を使った時は紙はどうしたものかと悩まされたものだ。  今までこのような場所には縁がなかっただけに、ここの生活に馴れていくことで自分がどんどんと汚れていくような気がした。そして明日、いよいよ晴れて自由の身になれる。 「ようタカオ。いよいよ明日で釈放だな。ここでの生活はどうだった?」 「とても快適とは呼べないが、あんたのおかげで幾分か気持ちはましだったよ」 「そう言ってもらえると有り難いね」  もう明日でここともおさらばだと思うと、思い切ってラマダの罪状を訊ねてみることにした。 「なあ、ラマダ」 「ん?」 「あんた、結局何をやらかしたんだ?」
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