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そのメールはすぐに彼のスマホに届けられる。
震えるスマホを取り出して彼女からのメールを確かめて、
「……負けた、か」
そう呟いて濡れた髪をタオルで乱暴に拭いた。
来たばかりのメール。
今なら家を出る前かもしれない。
だからすぐさま電話しようとして、彼は指を止めた。
こんなメールを送ってくるというのは、もしかしたら今は話したくないのかもしれない。
かけてくるなという合図かも、なんて考えながらスマホをベッドに放る。
「泣いた、かな?」
泣き虫な彼女のことだから、きっと泣いただろう。
だからといってその涙を拭うことは出来ない距離に自分はいる。
「……結構役立たずだね」
そう呟いて、またタオルで濡れた髪を乾かした。
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