2156人が本棚に入れています
本棚に追加
明確に分かるのは目の前のシェリーが自分を欲しいと言ってくれてるということだけで……。
「好きだ」という言葉はなんて甘美なんだろう。
自分の存在を肯定してくれて、認めてくれる。
だから付き合いたくなるし、欲しくなる。
彼女は?
今でも自分を必要としてくれてるんだろうか?
惰性なんかじゃなく、欲しいと思ってくれてるんだろうか?
「リョウ」
コトリと置かれるグラスにはネイルの施された綺麗な指がある。
「今回は特別。少しだけ待ってあげる」
そして、その指の持ち主は蒼い目を細めてそれは美しい笑みを見せた。
「だから、日本に帰りなさい。そして、彼女と別れてくるの」
別れる。
それは終わりと同じ意味だ。
それがベストなんだろうか?
自分にとって、彼女にとっても――。
「そんな簡単には帰れないよ」
ここはアメリカで帰るには飛行機に乗らないといけない。それにはお金だって絡んでくるから。
「なんの為にバイトしてるの?」
「それはこれから一人暮らしするために――」
「安くていいとこ、あたしが紹介してあげる。ルームシェアって方法だってあるわ。その相手だって探してあげる。飛行機も格安のチケットを見つけてあげる」
「……」
「そろそろクリスマスね。学校も休みだし丁度いいわ」
窓の外は木枯らしが吹いて、枯れ葉が宙を舞う。
「クリスマスに生まれ変わって、帰ってきて」
その景色はまるで、映画のエンディングのように綺麗だった。
最初のコメントを投稿しよう!