君伝3…7章 キス、しようか?

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「え? 帰ってくるんですか!?」 驚く彼女の声に「うん」と頷いて微笑む。 「いつですか? あ、あたし、お迎えにっ!」 「いいよ、だってまた迷子になるでしょう?」 「そんないつも迷子になんてなりません!」 画面の向こう、少しだけ頬を膨らませる彼女を可愛いと思う。 「でも平日だから予備校じゃないかな?」 「あ」 そんな表情も、あっと言う間に落胆色に染められる。 「で、でも! 夕方には終わるし!!」 「うん、それまで待ってるよ」 その声に「はい!」と答えてくれる彼女はどこまでも愛おしいと思う。のに、 「あ、コータの推薦決まったんですよ! それも手塚先輩と同じ大学で」 「琢磨とも一緒だね」 「そうなんです! だから今でも部活に出てたりして――」 「もしかして、君も出てるの?」 「え? あ、えと……、時間があるときだけで……」 どうしてこんな簡単にボタンを掛け違えてしまうんだろう? 「受験生なのに、大丈夫?」 「だから、本当にちょっとだけだし、時間の開いてるときだけっていうか」 「別に責めてるわけじゃないよ」 「……はい」 途端に重くなる空気にため息を付きたくなる。 結局、帰る便を彼女に教えることなく切れてしまった通話。 「帰りたくないな……」 思わずそう呟いて、軽く頭を振った。
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