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負けることに慣れることはない。
家に帰っても気分は沈んだままでベッドに伏せる。
こんな報告、彼にすぐ出来る筈もなく、だからって時間も止まったりはしない。
夜になって、
「そっか、負けちゃったんだ」
そんな姉の声に無言で頷くと、「よしよし、よく頑張ったね」と頭を撫でてくれた。
夕食に食べたシチューの味もサラダの味も覚えてない。
その後、姉に勧められるままお風呂に入って髪を洗って、ドライヤーで乾かしもせず、またベッドにうつ伏せる。
その時、スマホがピコピコと点滅していたけれど、美穂は顔を背けてピローに顔を埋めた。
そんなことをすれば翌朝には後悔の思いでいっぱいになる。
だけどこちらが朝ならあちらは夜。
そして、
「美穂ー、パン焼いたわよ?」
今日は朝から予備校で、
「うん、ありが」
「うわっ! どうしたの、その髪。 爆発してるわよ?」
「……あ」
朝から忙しいから、
『昨日はごめんなさい。あと、昨日負けちゃいました。今日は一日中予備校です』
メールだけ、彼に送った。
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