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……“心の奥”。
ドクッと、震えた理由。
考えなくても分かっている。
彼以外の家にお邪魔することを、拒否しているのだと……。
いつも考えるのは、彼のこと。
いつも会いたいのは、彼にだけ。
いつも声を聞きたいのも、彼の優しい声だけだ。
「……か? ……理香?」
そう呼ばれて、ハッと我に返る私。
目の前で私の顔を覗き込んでくる木綿先輩の2つの目が、そこにはあった。
「あ、お邪魔します……」
と言って、足を進めた部屋の中。
前の忌まわしい記憶が蘇ってきて、更に胸の奥底が悲鳴をあげた気がした。
木綿先輩に押し倒されて……
その時、私は……
そんなことを思い返すと、石像のように立ち尽くしてしまう私。
でも今更後には引けない……。
いつもなら、“理由” があった。
私が木綿先輩を拒否する理由が必ずあった。
けど今は何もない。
どうでもいい……。
彼と結ばれないなら、もう何もかもどうでもいい……
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