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日本は外国より平和だ。
誰かがそんな事を言っていた。事実、外国に比べると、日本は平和なのだろう。銃を持つ人は少ないし、街中で乱闘騒ぎもほとんどない。
だからと言って犯罪が減るわけもなく、むしろ微妙に増え続けている。
強盗、殺人、誘拐、掏り、脅迫などから、虐待、痴漢、詐欺、それらが結びついた妙な犯罪まで、種類は様々だ。
ここ数年でその仕事量の割に負担が多く、給料が安い為、希望者が減り続けている警察官。
増える犯罪者を裁く時間に追われる裁判官や陪審員。
彼らの負担を減らすために新たな機関が設けられる事、そして裁判所解散が今国会で可決された。
『合法復讐屋』
単語だけではどういう役職か曖昧だが、どうやら裁判所に代わり犯罪者を裁く役割を担うらしい。
職を無くした裁判官達が指導役となり、候補者を一人前の合法復讐屋に教育するのだ。
しかし裁判官が全員指導役になるわけではない。
多額の退職金と共に引退する裁判官もいる。
陪審員も必要なくなった。
一見マイナス面はないように感じるが、これでは犯罪者は減らない。
そこで合法復讐屋という役職の候補者に行き当たる。
国会が定義した新たな役職の候補者の定義は以下である。
『合法復讐屋候補者は下記の者に限られる。
一・犯罪者と判断されながらも正義感を持つ者。
二・身勝手な事情で犯罪を犯さなかった者。
三・学力、性格、常識に問題がない者。
候補者は合法復讐屋教育所にて指導役と二人一組になり、試験に受かるまで実技、模擬試験に励む事。給与は一般公務員と基本同額、能力により上乗せする。
また場合によっては、犯罪者をその場で裁く権利を与える。
合法復讐屋は常にバッジと拳銃一丁の所持を認める。 』
要は犯罪者に犯罪者を裁く権利を与えるというのだ。
確かに犯罪者は減るだろうが、とんでもない案が通ったものだ。
件の復讐屋教育所、休憩所にて。
配られた要綱を眺め、空いた手で煙草を吹かしながら、指導役となった大河原慶雄は煙混じりのため息を吐いた。
「一応受かったはいいが、今まで裁いてた奴らに教育ってありえねー・・・」
まだ四十代半ば、独身。
無職よりはましだがどうしたもんか。
が、悩んでいる暇はない。
慶雄は煙草を押し潰し、重い腰を上げた。
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