第1話

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青白く光る冷蔵庫の中には、使いかけの調味料と発泡酒が三本。 以上。 何よこれ。 これじゃあ空腹を満たすどころか、喉を潤す事もできないっつの! なんでこんな時のためにスポーツドリンクの一本くらい買っておかないんだ、私は! 自分の危機管理能力の低さに、怒りを通り越してめまいを感じる。 ぐう。 一晩中風邪菌と戦って弱り切った五臓六腑が、栄養を寄越せと腹の中で音をたてる。 仕方なく這いつくばるようにシンクへと移動してそのへんに転がってたコップに水道水を汲んで飲んでみたけれど、ちっとも潤った気がしない。 荒れた喉の粘膜に冷たい水が染みて痛い。 その上疲れきった内臓に突然流れ込んだ冷水で、胃がキリキリと軋む音がした。 あーもうダメだ。 SOSだ。 救助要請しないと、私このまま死んでしまう。確実に! 風邪をひいて熱だして、クリスマスイブの夜をひとりさみしく布団にくるまって震えてたなんて。 哀れすぎて誰にも知られたくなかったけど、もうそんな事言ってられない。 そんなつまんないプライド捨てないと、命を捨てる事になっちまう。
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