第1話

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私は冷たい台所の床で這いつくばっていた体を起こし、自分の部屋を振り返る。 散乱した服や雑誌やマンガの本で、床が見えないくらい散らかった我が城。 外界に救助を要請するには、まずこの部屋の中からスマホを探し出さなくてはならない。 散らかり放題の1DKのアパートの中から、スマホを探し出すのは至難のワザだ。 でも、やるしかない。 お前がやらなくて誰がやるんだ! 大丈夫、お前ならやれるさ! そう熱い言葉で自分を奮い立たせ、なんとか散らかった部屋に立ち向かう。 小一時間かけて、ベッドのマットレスをひっくり返し、クローゼットの中も押し入れの中も靴箱の中まで探し回っても見つからないスマホに、私は一人天井を仰いだ。 (ジーザス!) なんたる事。 神は我を見放したか。 こんなに探してもスマホが見つからないなんて……! おい神様のバカヤロウ! 自分の誕生日だからって浮かれて、こんなに困っている哀れな仔羊ちゃんを無視するなんて、職務怠慢もいいとこでしょう。 いくらなんでも非情すきるぜ。 もう神様なんて敬ってあげない! 神になんて祈るのやめた!(うちの実家は仏教徒だけど) くそったれ!
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