第1話

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ああ、お父さんお母さん。 若くして天国へと旅立つ薄情な娘を許してね。 せめて両親よりは長生きしてあげたかったけど、美人薄命っていうしね。 仕方ないよね。 お葬式の写真は、ちゃんととびきり映りのいい写真を使ってね。 間違っても、成人式の時のぱんぱんに太った写真を遺影にしないでよ。 あとそれから、実家の私の部屋に置きっ放しの昔の日記とか勝手に読まないでよ。 確かあれに中学から高校までの好きになった男の子の名前全部書いてるんだよな。 しかもなんか片思いしてる自分に酔ったおぞましいポエムらしきものまで書き綴ってあった気がする。 やばい。 あれを放置したままじゃ大変なことになる。 万が一、デリカシーのかけらもないバカ弟にでも見つかったら……! うわ。 想像するだけでぞっとするわ。 あの忌まわしい日記を処分してからじゃないと死ねない。 むしろ死んでたまるか。 クリスマスの夜に風邪なんかでひとりさみしく死んでられるか。 ぐう。 生への執念を取り戻したと同時に、また胃腸が栄養をよこせと音をたてる。 お腹すいた。 喉もかわいた。 もう我慢できない。 なんでもいいから食べたい。 何かヨーグルトか、せめてスライスチーズでも入ってないかとすがるような気持ちでもう一度冷蔵庫を開けた瞬間 自分の人生を悟った。(←再び今ココ)
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