最北端の地へ

4/9
前へ
/40ページ
次へ
「う~ん、厄介なのを引いたぞ・・・。」 斗真がコツコツと額を指で弾く。 「俺、この辺の地域にはあまり馴染がないんだよ。 だから、近くにある“あ”行の地名が思い付かないんだ。」 私も“あ”行の付く地名を考えていたが、ぱっと思いつくのは長万部、厚岸、旭川あたりで、これらはどれもここから遠い場所だった。 道内の地理に詳しいアヤも、少し悩んでいるようだ。 「この辺にも“あ”行の付く町はいくつかあるけど、これから行ったってもう観光できる場所がないからなぁ・・・。」 そう呟き、彼は私たちにこう同意を求めてきた。 「せっかくなら、観光したいだろ? 今日はそんなに動いてないし。」 「まあ、そうだけど・・・。 とりあえずは近けりゃどこでもいいよ。 ここまで来たなら、滝川でジンギスカン食べたいし。」 さっき話題に上がった滝川のジンギスカン。 その話題に一番喰い付いていたのは豊だった。 「じゃあ・・・、あれでいいか?」 豊の意見を聞き、斗真は国道の少し離れた所に立てられた青看板を指差した。 「歌志内か。砂川の隣町だな。 思い付かなかったよ。 たしか、道の駅に温泉があったはずだ。 今日はそこで風呂に入ろう。」 そう言ってアヤは、斗真に歌志内市街に向かうよう指示し、次の目的地を決定させた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加