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今は昔、竹取の翁(おきな)というものありけり――
「如月葵(きさらぎあおい)!!」
自分を呼ぶ大声に慌てて顔を上げた。
目の前には友人の高遠美央(たかとうみお)。活発的なショートカット、健康的に焼けた肌、顔立ちは整っているし、元気で綺麗な女の子。男女ともに羨望の的。
「もー、脅かさないでよ」
周りを見回して、休み時間だと分かった。
フルネームで呼ぶから、てっきり授業中かと……。
すっかり寝入ってしまっていた。ぼんやりと頭に残る内容と目の前に開かれた教科書を見ると、前の授業は古文。あまり得意な教科ではない。
「だって授業中からずーっと寝てるんだもの。先生にばれなかったの、奇跡だよ」
美央が苦笑を浮かべてこちらを見ていた。
「で?」
あくびを噛み殺しながら尋ねると、美央は首を傾げた。
まったく……、と思いながらも彼女に問う。
「何か用があって叫んだんじゃないの?」
別に叫んじゃないけど、と前置きをして、美央は「そうそう」と続けた。
「演劇部、興味ない?」
「……はあ?」
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