第一章

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「髪のお手入れをいたしましょう」 私の後ろに回って、上からすうっと櫛を通していく。 やっぱり、私の髪長くなってる。 八重さんが腰を折って、しゃがみこんで梳かしていく様子が横目で見える。 これも自分で梳かしたいけど、手が届きそうもない。 一通り梳かし終えると、彼女は手元を整理して再び立ち上がる。 「几帳を片付けますね。もうすぐ翁様、嫗様もいらっしゃると思いますので」 てきぱきと体を動かす八重さん。 「あ、手伝います」 そう言って動こうとした瞬間……。 「きゃあ」 倒れこんでしまった。 この格好……思ったよりもすごく歩きづらい! 「大丈夫ですか!?」 八重さんもびっくりしたようで、慌てて駆け寄ってくる。 この人はどうして、こんなにさくさくと動けるだろう。 「す、すみません」 「お手伝いなんてとんでもないです。姫様はおとなしくしていてください」
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