第一章

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「ご、ごめんなさい……」 八重さんに怒られてしまった。 仕方がないので端に腰を下ろして、辺りの観察に徹する。 ずいぶん大きなお屋敷のようだ。 竹取の翁って、お金持だったんだなあ……。 思い出した。 かぐや姫を見つけてから、竹を切るたびに黄金が出てきたんだっけ。 かぐや姫……。 どうやらここは平安時代。 そして私はかぐや姫のようだ。 ……かぐや姫って。 自分で考えて恥ずかしくなる。 絶世の美女? 光り輝く娘? 私が? ないないないないない。 心の中であきれながら首を振った。 手のひらを見る。これは、見慣れた自分の手のひらに見えた。 そっと顔に触れる。 輪郭、鼻や唇の形、目の大きさ……自分のものかよく分からない。 「かぐや姫や」 ふと、御簾の向こうから声が聞こえた。
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