第一章

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おじいさんの声? 顔を向けると、二人分の人影。 御簾を上げて入ってくる。 先ほど見たおばあさんと、優しげなおじいさん。 きっとこれが、竹取の翁だ。 「具合が悪いと聞いて心配してたんだ。もう、いいのか?」 心配そうに問われると、なんだか妙に罪悪感が湧いてきた。 私は、かぐや姫じゃないのに……。 「大丈夫です」 せめて心配させないようにと、にっこりと微笑んで見せた。 おじいさんもおばあさんも、とてもうれしそうな笑みを浮かべて頷く。 「そうかそうか。夕餉は食べられるか? 朝餉も食べず、腹が空いたろう」 おばあさんは私のすぐ隣へ腰を下ろし、おじいさんが話している最中もせかせかと私の髪に指を通していた。 その手つきに愛情を感じる。 おじいさんは、私の返事も聞かずに「夕餉の支度の様子を見てくる」と部屋を出て行った。 おばあさんは相変わらず、私の身なりを丁寧に整え直している。 罪悪感は、なかなか消えない。
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