第一章

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劇もどうなっているだろう。 みんな困ってるだろうな。 考え方が後ろ向きになっていく。 どうしてこんなことになっちゃったんだろう。 演劇の世界でだけ、かぐや姫になれるはずだったのに。 まさか、本当のかぐや姫になるなんて……。 どうしたらいいんだろう。 私は、どうするべき何だろう。 「姫様? お休みですか?」 囁くような、八重さんの声が聞こえた。 そういえば灯りを消しにまた来ますと言っていたっけ。 「あの……八重さん」 呼びかけると、しばしの沈黙の後布が開いた。 「どうかなさいましたか?」 「あの……私……」 この人に話して、信じてくれるだろか。 言葉に詰まる。 「……もう寝ます。おやすみなさい」 八重さんはにっこりと笑みを浮かべて、「お休みなさいませ」と頭を下げて出て行った。 手に、灯りを持って。 闇の中で、灯りが遠ざかっていくのを布越しにぼんやり見つめていた。
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