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美央曰く、
「演劇部、人が足りないらしいのよ。今度の文化祭で竹取物語をするらしいんだけど主人公のかぐや姫が決まらなくて……で、葵がちょうどいいんじゃないかと思って」
だそうだ。
にっこり可愛らしい笑顔で言われても困る。
「演劇部だったら、主役級とか決まってるんじゃないの? 3年生とか」
「うちの演劇部、掛け持ちの人が多いでしょ? 文化祭って言ったら他の部でもいろいろするし、やっぱり忙しいみたい。3年生はほとんど引退したし」
話しながらも腕を引っ張られて歩き続け……いつの間にか演劇部の前。
「ていうか美央って演劇部だったけ?」
「今年からね。陸上部と掛け持ち。興味があってさー、掛け持ちでもいいならってことで入ってみたんだ」
にかっと爽やかな笑顔。美央のこの笑顔には弱い。さすが、男女ともに人気ナンバーワン。
「なんで私なのさ」
半ば泣きそうになりながら問うと、美央は爽やかな笑顔のまま腕をつかんでいた手を離して、私と向きあった。
「真黒直毛長い髪。大きな瞳、小さい鼻、赤くてぷるっぷるの唇、つやつやの白いほっぺた。こりゃ主役をするしかない!」
髪、目、鼻、唇、頬順にすべて触れてから、両手をつかんで力説。
こんなに褒められたことなどないので、これはきっと主役をやってほしいが故のお世辞だ。
「さあ! いざ行かん演劇の道!!」
美央はすっかり入っていて、手をつなぎながらも片方は演劇部の扉に手をかけていた。
「いやあ~~~~~~!!!!」
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