第二章

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「もしかしたら、この世の者ではないのかもしれない。けれど、ここまで育て上げた私の想いは並々ではない。……爺の申すことを、聞いてもらえるだろうか」 そんな……そんなの。 私が食事する時の嬉しそうなおじいさんの笑顔、私の髪を愛おしそうに梳くおばあさんの手のひらを思い出す。 血のつながりなんてないけれど、私はかぐや姫じゃないけれど。 知らない時代で、知らない場所で、本当の親みたいに……。 「聞かないなんてことがあるでしょうか」 確かに私は、この世界の人間じゃないけれど。 あなたのかぐや姫じゃないけれど。 「本当の親だと思って……」 あれ? この台詞って、どこかで……。 「嬉しいことをおっしゃる」 おじいさんは本当に嬉しそうに微笑んだ。 しかしその顔がすぐに悲しそうな笑みに変わる。 「爺も齢七十を超えた。今日とも明日とも分からない命だ。この世では、女は男に嫁ぐことが普通だ。そうして一門が大きく発展していく。あなたも結婚しないままおられるわけにはいかない」   「そんな!」
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