50人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
これは……知ってる。
もしかして……もしかしなくてもこれは……
結婚しろということ!?
「あなたも女性だ。爺が生きている間はこのままでもいいでしょう。しかし、長い年月、熱心に通ってくださる公逹(きんだち)がおられることをよく考えて、どなたかお一人と結婚してさしあげてもよろしいでしょう」
……熱心に通ってくださる公逹って、確か五人の。
台本を思い出す。
「わ、私はそんな……たくさんの方が熱心に通ってくださるような容姿ではありません」
これは本音。
私はかぐや姫ほどの容姿を持ち合わせていないし、というかかぐや姫じゃないし。
「ていうか私、まだ学生だし……」
「え?」
呟いた声が届いたのか、おじいさんが首をかしげる。
「か、軽々しく結婚して、後悔するに違いないと不安です。天下の恐れ多い方と分かっていても、深い志を知らないままに結婚などできません」
慌てて覚えている台詞を続けた。
おじいさんは悲しそうな顔をする。
「思ったままを言う子だ。いったいどんな志のある人なら嫁ごうと決心できるのだ。あの人たちは並々ならぬ志の方々であろうと思うのだが……」
最初のコメントを投稿しよう!