第二章

10/15
50人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
「今日、まさに天竺へ鉢を取りに参ります」 石作の皇子から早速届いた手紙を、八重さんが読み上げた。 私宛だとわざわざおじいさんが渡してくれたけれど、例によって文字が読めない。 そこで八重さんに頼んだわけだ。 ほんとに行くんだ……、とまずはびっくりする。 「大丈夫でしょうかね」 八重さんは手紙を畳みながら心配そうに言う。 「庫持の皇子も、玉の枝を取りに行くと言って出掛けたそうです。今朝方使いの者が見えました」 「そう……」 「他の方たちも、きっとお出かけになったでしょうね……」 「ええ……」 「もう!」 生返事ばかりを返していると、八重さんがむくれた顔で隣に腰かけた。 最近の八重さんは感情を表に出してくれる。 これは……気を許してくれてるって言うのかな。 「殿方が哀れに思えてきます。せめてちゃんとお返事なさればよろしいのに」 八重さんはあきれ顔。 私は苦笑を返すしかなかった。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!