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その時、御簾に影がうつった。
「かぐや姫や、石作の皇子がお見えになったよ」
おじいさんが嬉しそうに部屋の中へ入ってくる。
その手にある花の枝に目がいった。
そしてもう片方の手に握られた、神社のお守りで見るような布に包まれた何か。
おじいさんは枝を私の前に置き、布から煤けた鉢を取りだした。
自分でも一通り眺めてから、花の横に置く。
「どうかね? これは、お前の求めていた石の鉢だ」
見た目はただの煤けた鉢。
……これが、かぐや姫の求めた石の鉢?
近づいて中を覗くと手紙を見つけた。
取り出し、八重さんに渡す。
八重さんは一礼してからそれを開いた。
そして声に出して読み上げる。
「海山の路に心を尽くし果てないしの鉢の涙流れき」
……ええと、それはどういう意味なんだろう。
困惑しているのが分かったのか、八重さんは続けて言う。
「海を越えて山を越える遥かに遠い天竺までの道のり、精根を尽くしながら石の鉢を手に入れたものの、その苦労には涙が流れました、と」
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