第二章

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その時、御簾に影がうつった。 「かぐや姫や、石作の皇子がお見えになったよ」 おじいさんが嬉しそうに部屋の中へ入ってくる。 その手にある花の枝に目がいった。 そしてもう片方の手に握られた、神社のお守りで見るような布に包まれた何か。 おじいさんは枝を私の前に置き、布から煤けた鉢を取りだした。 自分でも一通り眺めてから、花の横に置く。 「どうかね? これは、お前の求めていた石の鉢だ」 見た目はただの煤けた鉢。 ……これが、かぐや姫の求めた石の鉢? 近づいて中を覗くと手紙を見つけた。 取り出し、八重さんに渡す。 八重さんは一礼してからそれを開いた。 そして声に出して読み上げる。 「海山の路に心を尽くし果てないしの鉢の涙流れき」 ……ええと、それはどういう意味なんだろう。 困惑しているのが分かったのか、八重さんは続けて言う。 「海を越えて山を越える遥かに遠い天竺までの道のり、精根を尽くしながら石の鉢を手に入れたものの、その苦労には涙が流れました、と」
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