50人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
「求めていたものでは、なかったんですね」
八重さんは残念そうに言いながら片付けを始めた。
……私は安心したけど。
心の中で呟いてから、「少しお腹がすいちゃった」と言った。
八重さんは「はい、今お菓子でも準備しますね」と笑う。
ここでのお菓子は主に果物のことだ。
初めて出された時には拍子抜けしたけれど、味気のない食事よりもただの果物の方がずっと美味しい。
果物がこんなに美味しいなんて、知らなかった。
「かぐや姫」
おじいさんの声に驚く。
こんなに早く次の人が? と少々焦った。
「石作の皇子が、これをお前にと」
手紙を差しだしてくる。
八重さんに渡すと、すぐに開いて読み上げてくれた。
「白山にあへば光の失(う)するかと鉢を捨ててもたのまるるかな」
しばらく間を開けて、相手の意図を教えてくれる。
「白山のように光り輝く貴女に会ったために、先ほどまで光っていた光が失せたのかと思い、この鉢を捨てました。恥を捨ててでも何とか貴女と結婚したいのです……と」
最初のコメントを投稿しよう!