第二章

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「求めていたものでは、なかったんですね」 八重さんは残念そうに言いながら片付けを始めた。 ……私は安心したけど。 心の中で呟いてから、「少しお腹がすいちゃった」と言った。 八重さんは「はい、今お菓子でも準備しますね」と笑う。 ここでのお菓子は主に果物のことだ。 初めて出された時には拍子抜けしたけれど、味気のない食事よりもただの果物の方がずっと美味しい。 果物がこんなに美味しいなんて、知らなかった。 「かぐや姫」 おじいさんの声に驚く。 こんなに早く次の人が? と少々焦った。 「石作の皇子が、これをお前にと」 手紙を差しだしてくる。 八重さんに渡すと、すぐに開いて読み上げてくれた。 「白山にあへば光の失(う)するかと鉢を捨ててもたのまるるかな」 しばらく間を開けて、相手の意図を教えてくれる。 「白山のように光り輝く貴女に会ったために、先ほどまで光っていた光が失せたのかと思い、この鉢を捨てました。恥を捨ててでも何とか貴女と結婚したいのです……と」
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