第二章

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これは美央に教えてもらったっけ。 恥と鉢をかけていて、上手い歌だと。 鉢を捨ててまた言い寄ったことから面目ないことを「恥を捨てる」と言うようになったらしい。 本当なのか嘘なのかは、分からないけれど。 八重さんは硯箱を手に困った表情でこちらを見ている。 返事を書くのか、聞いているのだ。 私は視線を落として首を振った。 おじいさんもそれを見てか、小さくため息を吐いて部屋を出て行った。 重い沈黙。 「今日のお菓子は何かなー」 呟くと、八重さんは苦笑を浮かべて硯箱を元の場所に戻し、部屋を出て行った。 手には石作の皇子から受け取った手紙を持っていたから、処分してくれるのだろう。 ……これであと四人。 一人残った部屋で、そんなことを思った。
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