51人が本棚に入れています
本棚に追加
石作の皇子が来て数日、今度は八重さんが面白くない噂話を持ってきた。
「庫持の皇子様が、優曇華(うどんげ)の花を持って都へお上りになったそうですよ」
最初、何のことを言っているのか分からなかった。
けれど庫持の皇子、と聞いて思い出す。
あの、蓬莱の玉の枝のことだろう。
思わずため息が漏れる。
そんな噂を聞いて、いつ来るかとひやひやしていたが一向に現れない。
噂って、いつの時代も当てにできないものなんだなあ……。
そんなことを思いながら退屈な日を過ごしてきた、ある日。
「庫持の皇子様がいらっしゃったよ。旅のお姿のままだ」
いそいそとおじいさんが部屋に入ってきた。
なるほど、手には根が銀、茎が金、実が真珠に見える木の枝を持っている。
「きれい……」
思わず息が漏れた。
受け取って近くで見ると、ますます素晴らしいと見惚れてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!