第三章

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石作の皇子が来て数日、今度は八重さんが面白くない噂話を持ってきた。 「庫持の皇子様が、優曇華(うどんげ)の花を持って都へお上りになったそうですよ」 最初、何のことを言っているのか分からなかった。 けれど庫持の皇子、と聞いて思い出す。 あの、蓬莱の玉の枝のことだろう。 思わずため息が漏れる。 そんな噂を聞いて、いつ来るかとひやひやしていたが一向に現れない。 噂って、いつの時代も当てにできないものなんだなあ……。 そんなことを思いながら退屈な日を過ごしてきた、ある日。 「庫持の皇子様がいらっしゃったよ。旅のお姿のままだ」 いそいそとおじいさんが部屋に入ってきた。 なるほど、手には根が銀、茎が金、実が真珠に見える木の枝を持っている。 「きれい……」 思わず息が漏れた。 受け取って近くで見ると、ますます素晴らしいと見惚れてしまう。
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