第三章

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枝に手紙が結びついていた。 解いて八重さんに渡す。 「いたづらに身はなしつとも玉の枝を手折らでさらに帰らざらまし」 ――虚しく無意味に我が身が果てたとしても、玉の枝を手折ることができないまま手ぶらで帰ろうなどとは思いませんでしたよ。 「お前が庫持の皇子に申しつけた蓬莱の玉の枝を、このお方は少しも違わずに持って帰られたのだよ。どうしてこれ以上、とやかく文句を言えるだろうか。皇子は旅のお姿のままで、ご自分のお屋敷にもお寄りにならずにいらっしゃっている」 確かに、目の前の品は素晴らしい。 これは本当に、かぐや姫が求めたものかもしれない。 でも。 物語では、これは偽物。 ……ここは本当に物語の世界なの? 頬杖をついて考え込む。 石作の皇子が持ってきた石の鉢は偽物だった。 でもこれは……どう証明すればいいんだろう。 物語では……。 「目の前に品があるのです。もう、嫌とは言えないはずですよ」
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