第三章

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「あのー……」 パニックになっていると、外から知らない声が聞こえた。 何やら揉めているようだ。 御簾に出来るだけ近づくと、内容が聞こえてくる。 「内匠寮の技官をしている漢部内麻呂と申し上げます。庫持の皇子にご注文頂き、食べるものも食べず、長い年月をかけて玉の枝を作りました。それなのに、まだ報酬をお支払いして貰っていません。報酬を頂いて、不肖の門弟たちにも賃金を支払いたいのですが……」 「これはどういうことですか?」 おじいさんが尋ねている。きっと庫持の皇子もそばにいるのだろう。 「さあ、この手紙をお受け取りください」 手紙!! きっとあれに、詳細が書いてあるに違いない! 「手紙を……」 声をかけようとすると、「私が」と八重さんが部屋から出て行った。 すぐに帰ってきて、どうぞと手紙を差しだしてくれる。 慌てて受け取ろうとしたが、思い直して苦笑を浮かべた。 私、読めないんだった。 「読んでください」 八重さんは一瞬きょとんとこちらを見ていたが、すぐに手紙を開いて読んでくれた。
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