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「限りなき思ひに焼けぬ皮衣袂乾きて今日こそは着め」
――あなたへの限りない愛情でさえも燃やせない火鼠の皮衣。これを手に入れて恋の涙に濡れていた袂もようやく乾きました。今日こそは、気持ちよく濡れていない衣服を着られます。
八重さんが読み上げてくれた手紙の内容を聞きながら、箱の中にある衣を手に取った。
今日訪れたのは右大臣の阿部御主人。
持ってきたものは、火鼠の羽衣。
羽衣ってこんなにきれいだったんだ……。
見た目は紺青色。毛の先端は、金色に光り輝いているようにも見える。
「綺麗な羽衣……」
「本当に。さあ、大臣をここに呼びましょう。世の中で見たこともない皮衣、これは本物だという風に思えます。大臣にあまり悲しい思いをさせないようにしなさい」
「え、ちょっ……おじいさん!」
おじいさんは大臣を呼びに部屋を出て行ってしまった。
私の隣には、おばあさんが腰を下ろしている。
その表情は何とも嬉しそうだ。
今度こそ……と喜んでいるのが空気で伝わってくる。
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