第三章

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私はその手紙を受け取り、羽衣が入っていた箱に入れておばあさんに差しだした。 おばあさんは戸惑いながらもそれを受け取り、御簾の向こうにいるおじいさんに渡したようだった。 そしておじいさんから右大臣へ。 右大臣の影が中の手紙を取り出したのが見え、しばし間があってから影はよろめきながら去って行った。 「まこと、もったいのうございました」 背後で八重さんが呟く。 私も羽衣の焼けかすに視線をやりながら、手触りを思い出してみた。 ……玉の枝もそうだったけれど、あんなにきれいなものを受け取ってもかぐや姫の心は動かなかったんだ。 理由があるにせよ、並みの女の人じゃないのだと改めて思う。 ……そんなかぐや姫が恋した帝。 まだ会ってないけれど、素敵な人だったのかな。 一体、いつ会えるんだろう。
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