第三章

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また数日後、八重さんが慌てた様子で噂話を持ってきた。 「石上の中納言様が床に伏せっているそうです!」 部屋に入るなりそういう八重さん。 申し訳ないけれど、最初その石上の中納言が誰か分からなかった。 「姫様に求婚して、難題を言われたうちのお一人ですよ」 難題とは失礼な……。 「えっ!?」 驚いて手に持っていた貝を落としてしまった。 例によって貝合わせで暇をつぶしている最中だったのだ。 それよりも石上の中納言に依頼したのは燕の子安貝……。 考えてから、はたと思い至る。 い、一応確認しておこう。 「なんでですか?」 尋ねるとことの次第はこうらしい。 食糧管理の役所の柱に燕の巣があるのを見つけた中納言は、子安貝を取ろうと縄をつけてもらって自ら上り、取った瞬間まっさかさまに落ちてしまったらしい。 しかも子安貝と思ったものは燕の糞で、大層がっかりなさったとか。 すっかり気落ちしてしまった中納言は身体を悪くして寝ているそうだ。 あいたたた、さすがに責任を感じたりして。 話を聞きながらも、自分の顔が歪んでいくのがわかった。
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