51人が本棚に入れています
本棚に追加
「八重さん、お見舞いの手紙を書くのはどう思いますか?」
尋ねると八重さんは優しげに微笑みながら頷いた。
「そうですね。それがいいと思います」
「年を経て波立ち寄らぬ住の江のまつかひなしと聞くはまことか、と書いてください」
――長い間、こちらに立ち寄って下さっていないですね。波も立ち寄らない住吉の松ではないですが、待つ貝(松・甲斐)もないという話を人づてに聞いています。それは本当なのでしょうか。
確かこんな台詞があったはず。
意味も、松と待つ、貝と甲斐がかけられていて、面白いと思ったから覚えている。
間違ってはいないはずだ。
本当はもっとちゃんと、自分の言葉でお見舞いを贈ることができればとも思うけれど、自分で歌を詠むなんてできないし、この時代の文体で手紙をかけるとも思えない。
だって私、古文苦手だし。
思ってからため息が漏れた。
もっと勉強しとけばよかった。
最初のコメントを投稿しよう!