第三章

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「大納言様からも音沙汰ありませんし、あきらめてしまわれたという噂を聞きます。……そうそう、竜の珠を取りに行って竜の怒りに合い、両目が李(すもも)のように腫れてしまったとか」 どくんと身体が熱くなる。 私のせいでまた……。 これで求婚者は全滅。 嬉しいはずなのに、嬉しくない。 私がしたかったのは人殺しじゃない。 ただ、結婚したくなかっただけなのに。 八重さんは私を責めない。 もちろん、おじいさんも、おばあさんも。 ただ、残念がっているだけ。 この世界では普通なの? それでも……それでも、私が依頼したことで死んだり、苦しんだりしてる人がいるのは事実だ。 「ごめんなさい、八重さん。一人にしてもらってもいいですか……」 出した声はかすれていて、自分でもささやき声みたいだと思った。 八重さんは心配そうにこちらを見つめ、しばらく迷っていたようだったが、やがてゆっくりと一礼して部屋から出て行った。 視界が滲む。
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