51人が本棚に入れています
本棚に追加
気付くと夜になっていた。
雰囲気を感じ取ったのか、八重さんも顔を見せず、ここには灯りひとつない。
外から漏れる明かりだけ。
また眠れば、明日が来るだろう。
私の世界とはまったく違う、過去の明日が。
「かぐや姫や」
ふいにおばあさんの声が聞こえた。
暗い部屋に息を飲むのが分かったけれど、急いでいるらしくそれについては何も言わずに別のことを続けた。
「お前の美しさを噂で聞いたとかで、帝のお使いがいらっしゃったよ。さあ、早くお会いしなさい」
帝!?
振り向こうとした自分をぐっとこらえる。
「私は……」
また涙がこみ上げてきて、ぐっとこらえながら言葉を絞り出す。
「私は美しくなんてありません。どうして……お会いすることなんてできるでしょうか」
かぐや姫でもないのに。
最初のコメントを投稿しよう!