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次の日、目が覚めてもやっぱりここは平安時代。
深くため息をついて、身支度を始めた。
動く音が聞こえたのか、八重さんが入ってきて身支度を手伝ってくれる。
身支度を整えて八重さんに髪を梳かしてもらうため腰を下ろす。
そこで、すっかりこの時代に慣れたなあとしみじみ思った。
初めて身支度してもらった時には八重さんにまかせっきりだったのに。
自分の成長を思って、苦笑が浮かぶ。
あんまり嬉しくないな。
「かぐや姫、かぐや姫!」
ちょうど毛先を整えてもらっている時、あわただしくおじいさんが入ってきた。
「帝が、お前が嫁げば冠とその地位を与えてやるとおっしゃって下さっている。それでも宮仕えをしたくないのかい?」
おじいさんの目は爛々と輝いていて、怖いくらいだ。
冠とその地位。
それがどれくらいすごいことなのか、私にはよくわからない。
けれど竹取だったおじいさんにしてみれば、そういった地位と名誉が喉から手が出るほど欲しいものなのかもしれない。
それでも。
「宮仕えなんてできません。無理やりにでも宮仕えさせようというのなら、私は消えてしまいたいとさえ思います。 おじいさんに冠とその地位が授けられるように、宮仕えしましょう。けれどそのあとすぐに、死んでしまいます」
そうだ。
帝に会う前に死んでしまえばいい。
死んだらどうなるんだろう。
もしかしたら、元の世界に戻れるかもしれない。
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