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――かぐや姫……
「え」
呼ばれたような気がして、振り返った。
「葵ちゃん、どうしたの?」
嫗役を務める七尾さんが不思議そうに尋ねてくる。
「あっ、ごめんなさい!」
部室で演劇の練習真っ最中だった。
セリフをすっかり飛ばしてしまっている。
「ぼーっとしちゃって。何かあった?」
美央も脇で不思議そうに首を傾げている。
「誰かに呼ばれたような気がして……」
呟いてみたけれど、自分でおかしいことを言ってるなと気付いた。
あれは男の人の声だった。男の人はもちろんいるけれど、このシーンでは出番がないし、聞いたことない声だった。
というか、私が呼ばれたわけではなく、「かぐや姫」って……。
「気のせいかな。ごめんなさい」
「いいよいいよ。ちょっと休憩しよっか」
七尾さんはにこやかに許してくれ、どっこいしょと立ちあがった。
休憩と聞いて周りもガヤガヤとうるさくなる。
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