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なんだか、今まで足掻いていた俺が馬鹿らしくなってきていた。
「俺もあんたに礼を言わなきゃな。ちょっと憑き物が落ちた気分だわ。ありがとな」
もうほとんど空気みたいになってる。
「最期の言葉を家族に伝えて。私、幸せだったよって。もしも叶うなら、また家族になろうって。だから、私の分ももっといっぱい幸せでいてくださいって。私の名前はね―――――………」
女は静かに空気に溶けて…
腕時計はちょうど0:00になっていた。
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―――――
―――
半年が過ぎ。
俺は実家の神社に戻っていた。
うちの神社は、平安時代から続く由緒正しい神社らしい。
親父も、祖父さんも俺が跡を継ぐって言ったら男泣きして喜んでくれた。
ナントカって陰陽師の家系だとか教えられたが、イマイチよくわからねぇ。
だけど“あの日”以来、俺は俺なりに前向きに生きようと努力している。
女が残した言葉をもとに、いろいろ調べて女の家族を探し出すのに1か月もかかってしまい。
訝しむような視線に耐え、ことの顛末を包み隠さず話し終えたとき、女の両親や兄弟は涙を流して感謝の言葉をくれた。
“あの子の最期の言葉が聞けて良かった”
そう言われて、俺は実家に帰る決心がついたんだ。
もうすぐお盆。
あいつは初盆だからな。
多分、帰ってくるだろうから、もしも会えたらもう一度感謝を伝えたい。
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