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「おはよー。あれ、何見てんの?」
「あ、ちょっと!」
自分の席にカバンを置いてタータンチェックのマフラーを外しながら近寄ってきた遥は、机に広げていた雑誌を手に取りそこに大きく書かれていたカラフルな文字を目で追った。
「……手作りバレンタイン特集?」
ページ一面にプリントされた、色とりどりにデコレーションされ滑らかなつやを放つトリュフやさっくりとした表面に白い雪を降らせているガトーショコラ。
そしてそれらを引き立てるように飾られている誘い文句たちを目に映しているのか、遥の口角はゆるゆると上がっていった。
その表情からこれから言われるであろう言葉がなんとなく想像出来てしまう自分が、少しだけ悔しい。
「へえ、里紗が手作りチョコねえ」
「私だってチョコレートくらい作れるわよ」
小馬鹿にしたような笑みを浮かべる遥に負けじと言葉を返す。
しかしそんな私の些細な抵抗は通用せず、笑みは深まる一方だった。
「家庭科の時のこと忘れたの? 分量量り間違えて味おかしくしたの、誰だっけ」
「そ、そんな過去のこと覚えてないし」
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