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にやにやとした顔でこっちを見てくる遥の手元から雑誌を奪い、再び視線を開かれているページへと落とした。
フリルの付いた可愛らしいエプロンを着けて、ボウル片手にチョコレートを混ぜる女の子の笑顔が心なしか眩しく見える。
からかう遥の手前粋がっては見せたが、正直言って料理は得意ではないしむしろ苦手な方だ。
家庭科での失敗だって忘れているはずもなく、同じ班のメンバーからの呆れたような視線や先生の苦笑いを思い出せば今でも恥ずかしいし嫌な気分になる。
しかし、そんな嫌な思い出が染み付いている料理からいつまでも逃げていく訳にはいかない。
例え友達にからかわれても立ち向かわなければならない時がある。
そしてその時が、今なのである。
「それで、何でいきなりチョコ作ろうと思ったの?」
斜め上から向けられる心なしか好奇心を含んだ瞳に負けて、僅かに視線をずらしながら答えた。
「いや、ね、北本君にあげたいなあと思って」
「……なるほどね」
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