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「彩実が振ったんだって。『もうあんな奴とは関わりたくない』って言ったみたいだし……何かあったんだろうね」
「浮気とか?」
「さあ。本人が理由言ってないみたいだからわからないけど」
あんなに仲が良さそうだったのに何が起こるかわからないものだ。
理由こそわからないものの、突然別れてしまった友達に同情の念が沸く。
しかし、それと共にもう一つ残念なことが起こった。
「じゃあもう北本君のこと聞けないのか……」
友達が別れてしまったというのにそんなことを考えてしまう自分が情けない。
しかし、これも私にとっては重要なことなのだ。
そんな私の心情を理解しているのか、遥は困ったような笑みを浮かべながら机についていた肘を下ろす。
そして少し絡まっていた髪の毛を梳かしながらゆっくりと腰を上げた。
「しょうがないでしょ。ま、頑張んなよ」
そう言ってライトグレーのピーコートを脱ぎながら自分の席へと戻っていった。
椅子から立った後に時間差で崩れ落ちてきたプリントには気付かずに。
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