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午後の公園で子供たちが遊んでいる。
夏の陽が斜めに差して、ジャングルジムの角に薄い影を造る。
3歳ぐらいの半ズボンの男の子と赤いスカートを穿いた
女の子が滑り台から順番に降りて来て、また滑り台の
後ろへ回り、階段をよじ上って降りてくる。
ブランコには誰も乗っていない。
その男の子と女の子の母親たちが、その子達のリュクを
片手の腕に掛けて砂場の奥で立話をしていた。
しきりに子供達の様子を伺っている。
舞香は、サンペレグリノのミネラルウオーターの
グリーンのボトルを手に取って口をつけながら、
今頃、誰かと結婚していれば、あの子供達と同じ位の
年齢の子供がいたかもしれないと、ふと、思った。
二、三度、肉体を交わしただけの間柄の、ケイスケが
頭の中に過った。
けれどケイスケとの関係の中で、一度も舞香は
満足したことがなく、彼が望んで舞香の子宮に
子供を授けようとしても、きっと、どこかで
神様がそれを妨げたに違いない。
そう、思うと、少しほっとするが、結婚していれば、
今ほど、会社で人間関係を気にする必要もなく、
きっと、幸せな妻だけを演じていればケイスケは満足し
安定的な生活が出来たかと思うと、残念な気がした。
これから、会社でキャリアを積み上げて行くのか、
ほかの男性と幸せな結婚に踏み切るのか、女盛り、
ここが正念場だと、この頃つくづくそう思うようになった。
合コンの誘いが、この頃、めっきりと少なくなって、
遊ぶ相手もタダ飯も、不足気味になってきた毎日を、さぁ、
どうやって乗り切ろうかと、思っていた矢先、
レイコから突然、ショートメールがやってきた。
大学時代の友人で音信不通になっていたレイコだったが、
自分は元気で、今、東京にいると書いてある。
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