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舞香は曖昧な返事をした。
レイコはアイスティーをストローでかき混ぜながら、
舞香の顔を見て、大丈夫だった? と、訊いた。
「何が?」
「うーん、ヒトシ……」
「ヒトシ君ねぇ……」
舞香が返答に困り考えていると、レイコが察したように言う。
「彼奴と会った?」
「会ったよ……」
「大丈夫だった?」
「だから、何が……?」
「変なことされなかった?」
「別に……」
舞香は茶を濁す。
「ごめんね……」
レイコがそう言うと、すかさず、舞香は、レイコが
謝る事じゃないでしょ、と、語気を強めて言った。
「実家に帰ったときにね、彼奴の両親から連絡があって、
全部聞いたのよ。事件のこと……、それで、舞香にも
迷惑がかかっていないかどうか、ちょっと心配で……、
それで連絡したんだけど……」
「わたしなら、大丈夫、それより、レイコは大丈夫なの?」
「うーん……」
レイコが言葉を詰まらせる。
「実は……、舞香に頼みごとがあって、連絡したんだけど……」
レイコがそう切り出して、舞香に金を少し貸してほしいと頼んだ。
「ほんとは、こういうお願いをしたくはないんだけれど……」
とも言い、話を続ける。
付き合っていた彼の会社が倒産して、どうにもならなくなり、
その彼に金を貸したが逃げられて、絶望の淵で彷徨っていたとき、
別の男性と知り合い、結婚を迫られた。その男と駆け落ちしようと
考えたが、金が一銭もなく、両親に相談したが怒鳴られて家出し、
そのままその男の家へ転がり込んだのだと言う。
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