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「2万くらい……」
レイコが寂しそうに言う。
舞香が自分の財布の中を頭の中で計算していると、
座っていた後ろから突然、声をかけられた。
「舞香さん?」
飲み物を持って、舞香の後ろを通り過ぎようとしている男が言う。
レイコは興味津々の顔でその男と、舞香の顔を見比べながらにやにやしている。
舞香が振り返ると、スーツを着て眼鏡をかけた男が立っていて、首をかしげる。
「ケイスケだよ、憶えている?」
舞香は……憶えている……と、だけ答える。
「元気そうだね、今、どうしているの?」
「今は……」
舞香が言葉に詰まっていると、ケイスケがあわてて、あ、ごめん、お友達?
邪魔しちゃったみたいだな、と、言い、
もし、舞香とレイコの二人だけでこれからどこかへ行くのだったら、
三人で食事しないか、と、言う。
舞香とレイコは顔を見合わせ、レイコは舞香が良いなら、
一緒に行くとのことだったので、三人で食事することにした。
ケイスケは自分の会社がある副都心のほうまで二人を連れて行き、
高層ビルの最上階の焼き肉レストランへ入った。
次々に皿が運ばれ、流れ作業のように皿から
鉄板へ肉が並べられて行く。
「さ、じゃんじゃん、食べて」
ケイスケがはつらつとした声で言う。
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