第2話

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レイコは、はーい、と、甘い子猫の鳴き声のように言い、箸を延ばす。  舞香が無言でビールを飲むと、ケイスケと目が合った。  ケイスケが微笑む。 「夏はスタミナをつけなきゃね」 そう言いながら肉をひっくり返す。  ケイスケは折柄の入ったワイシャツのボタンを一つはずし、 鎖骨が覗く。 以前は、それほどがっしりとした体格ではなかったが 肩幅が広くなり、胸板も厚くなっている。 「最近、専属のトレーナーをつけてジムでトレーニングしているんだ」 と、ケイスケが言う。  そっけなく、そうなんだ、と、頷きながら舞香が返事をする。 「前は……、その……、あれが弱かったけど……」  ケイスケは酔いが回ってきたのか、顔を真っ赤にしながら言う。 「何が……弱かったの?」  レイコがケイスケと舞香に訊く。  さぁ?と、舞香が言うと、照れたようにケイスケがにたにたと笑う。 「エッチね、彼は、弱かったのよ……」  舞香がきっぱり言うと、ケイスケは急に怒ったように、 別に、弱かったわけじゃないさ、あのときは 疲れていただけだよ、と、言う。 「まぁ、まぁ」と、仲裁に入るようにレイコが二人を促すと、 ケイスケは鉄板の上の肉をひっくり返し、 焼けた肉に箸を延ばし、その肉を舞香の皿に置く。    舞香は、小声でありがと、と、言った。  ケイスケが頷く。   窓を見ると高層ビルからの赤や青や緑のネオンサインと 赤色に点滅する航空安全灯とが混ざり合い、熱帯夜にうごめいていた。
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