第2話

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「さ、もう一杯」  ケイスケがレイコの空いたグラスを見てそう言うと、 「レモンサワー、頼んで良い?」  舞香はすかさずグラスを置き、ケイスケに訊く。 「ああ、……いいよ、じゃんじゃん、頼んで」  舞香はインターホンで追加の飲み物を頼むと、 わたしも、と、レイコが叫ぶ。  舞香はレモンサワー2つ、と、 大声でインターホン越しに言い、受話器を置く。 「あ、俺も頼めばよかったな……」  ケイスケが弱々しい声を上げる。  しばらくするとウエイトレスがサワーの入った ジョッキ2つと、生レモンが載った銀色の絞り器を お盆に載せ、個室に入ってくる。    ジョッキと絞り器をテーブルに並べていると、 ケイスケが、あ、すみません、ウーロンハイ 1つ追加で、と、言った。  レイコがレモンの絞り器と格闘し、しぼれなーい、 と、また甘ったれた声で言うと、あ、じゃ、ぼくがやりましょう、 と、言ってケイスケがしぼってやる。  舞香は自分でレモンをすばやく絞って、レモン汁を ジョッキへ注ぐと、一気にジョッキを飲み干した。  三人は焼き肉レストランを出ると、ビルの正面玄関に 客待していたタクシーへ乗り込み、ケイスケはこの後、 カラオケでも行かないか、と、誘ったが、 舞香は気分が悪い、と、断った。  ケイスケはそのまま、三人をタクシーで送ると言って、 新宿から近い舞香の家へ先に向かい、目白を過ぎて 住宅街へ入ると、一方通行だからそこで良いと、舞香は言い、 電柱が分岐している路地の角でタクシーを止めた。 ドアが開き舞香を降ろす。  じゃ、ここで、と、舞香は言い、手を振る。 「じゃね、舞香、また、メールする」と、レイコは言い、奥に座った、ケイスケも、じゃ、また、と、舞香に言う。
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