第3話

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雑誌のページをぱらぱらと、めくっていると 搭乗アナウンスが聞こえる。  直也はチケットを手に取り、座席を確認すると、 じゃ、そろそろ行こうかと言う。    ファーストクラスの乗客が少なかったので、早めに 舞香たちの座席がアナウンスされ、直也と舞香は隣同士、 席に並んで座り、舞香は窓際に座った。  ヨーロッパ線の長いフライトの途中、眠りについたが 寝付けず何度か目が覚めた。  直也は旅慣れているらしく、よく眠っている。    映画を上映していたので、しばらく見ているうちに疲れていたのか 睡魔が襲う。 浅い眠りの中で夢を見た。  舞香は草原に佇んでいた。  ただ、風の音だけが聞こえる。  風が草むらを揺らす。  空気は乾いていて、大気は薄らと灰色だった。       舞香は白の半袖のワンピース姿で、髪はポニーテールに束ねている。  そのポニーテールをゆっくりと解いて、風に身を任せてみる。  足元は素足のままだったが、歩いているといつの間にか、 ミュールを履いていた。  いつも愛用しているペパーミントのミュールだ。  舞香がしばらく草原を歩いていると、レイコが立っている。 「なに、やっているの? レイコ? ここはどこなんだろう……」  舞香がレイコに尋ねる。  レイコは無言で、舞香の手を掴む。 「いやよ、どこに連れて行くの?」  レイコは無言のまま、真っ直ぐに前を向いている。
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