第3話

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男のように強くレイコは舞香の手を引っ張る。  舞香はなすがまま、歩くしかない。  しばらく、レイコに引きずられるように歩いていると、 ちいさな村があった。  見た目は日本の農村で、集落には人影がない。  藁葺き屋根の高床式の家屋に入って行く。  中には誰もいないが、いろりだけ火が灯っている。 冬ではないはずだが、夏か春か、季節はわからないが、 特に寒さは感じられない。  舞香はミュールを土間に脱いで座敷に上がる。  そこに座れ、と、レイコが舞香に指図する。  無言のまま、舞香が座ると、そこではない、 いろりの端の縄締めの座布団の上に座れ、と、命じる。  舞香は仕方なくそこに座った。  しばらくすると、レイコが消え、正面に老婆が座っている。  最初はひとりだったが、徐々に増えて、 三人の老婆が舞香を取り囲むように座る。  その中の一人をよく見ると、あけみだった。  年老いたあけみが哀しそうな目で舞香を見ている。    一瞬、涙を浮かべたかと思うと、俯き、瞬時に顔を上げて、 舞香の目の前へ迫ってくる。  舞香は驚き後ずさりした。  舞香は腰が抜けたように身動きができず、 立ち上がる事さえできない。  恐怖のあまり、目を閉じると、あけみは消え、 再び目を開けると、三人の老婆も消えていた。  しばらくの間、いろりの火にあたっていると眠くなり、 板の間に横になる。  すると、レイコが再び現れ、同じ大学時代の友人の ミスズも側にいる。  三人でトランプしようと言う。
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