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「大学生の頃、良く三人でいっしょに
トランプしたじゃない、だから、しようよ」
ミスズが舞香に囁く。
レイコがカードの束を切り始める。
最初はゆっくりカードを切っていたが、
しだいに早くなり、目に見えないスピードでカードを切ったかと思うと、
カードの束を三人の中心に置いた。
「じゃ、舞香、最初に引いて……」
舞香がカードを引く。
「それじゃ、そのカード、表にして」
ミスズが言う。
おもむろに舞香がカードをひっくり返すと、ジョーカーだった。
ミスズの目が変る。
「やっちまったな、お前、ほんと、馬鹿、なんで、
こんなこともできねぇーんだよ、ほんとにアホ、
だからこういう始末になるんだよ、舞香、わかる?」
豹変したミスズは苛立ったように言って、さぁ、早くしろよ、と言う。
「何をするんですか……」
怖くなって舞香がミスズに訊く。
ミスズとレイコは無言のまま隣の部屋を指し、
その部屋へ行けと、言う。
舞香は立ち上がって板の間を歩いてゆく。
次の間には板の間の上に銭湯の番台のようにも見える背の低い、
帳場があり、そこにさっきの老婆の一人が無言で座っている。
カネを置いての襖を開けろ、と言う。
舞香はワンピースの胸ポケットから小銭を出し、老婆へ渡すと襖を開けた。
白い砂浜が広がり、蒼い海の潮騒が聞こえる。
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