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「すっげぇ、優しい奴だったぜ。お前」
オレの怨みが消えたワケじゃない。
ミユ…
…大庭深雪に対し、心の底から申し訳なく思いながらも、オレは夜叉にそう言った。
もう二度と、友達を犠牲にしたくはないから。
「……そっかぁ」
ふるふる、と震える両手を、夜叉は螺旋のような目で見つめていた。
残念ながら、オレは他人の心理を見破られるほど優れた人間じゃない。
「……」
「……買い物、教えてくれ」
「……」
だけど…
これだけは分かる。
「お前、なにをそんなに怯えてんだ?」
「…え…?」
「なんで、そんなに人を遠ざけようとしてるんだ?」
一瞬だけオレと目を合わせたが、すぐに己の両手を見つめ直している。
「…夢、見るんだ。沢山の人間を殺す…夢……」
「具体的には…?」
「アタシは影を操って…そしてその影で人間を襲って……」
挙げ句には食す。
…なるほど。だからか。コイツも、もう人に危害を加えたくないから…
完全に記憶を抹消されたワケではないらしい。
しかし…中途半端だな。人間でもなければ、妖怪でもない。
「だいたい、なんでそんな服着てんだ? 学校行くのか?」
「…ナッちゃんがくれた。『おさがり』だって」
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