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そして289回目の電話…
─プルルルル
【はい…】
「あ、あの…バイト情報誌見て…」
【あぁもう…分かったわよ。…それじゃ今から来て】
「え、マジすか!!」
【仕方ないでしょ? 営業妨害喰らうよりはマシよ。名前は?】
「こ、近藤ですッッ」
無駄にピシッと張り詰めた声で言ってみる。
【あ、そ。じゃあ1時間あげるからその間に来て。遅れたらこの話、ナシだから】
─ガチャッ
鋭くなる一方のガチャ切り。
だれだよ、怒らせたのは。
怒った顔もステキだよ……
とか言ってみよう。
歩いて5分の所にある『呂隈心霊依頼所』。
まさか、これほどまでに近いとは。
インターホンを押し、蝶ネクタイが曲がっていないか確認する。
「はい。どちら様…? あら、近藤クン? 久しぶりね。どうしたの? タキシード姿で花束なんて持って。パーティーの帰り?」
「え!? な、ナッちゃん!? なんで、こんな所に…」
20代半ばで、茶髪の前下がりのボブヘア。ナチュラルメイクのその女性は、ショート丈のワンショルダーにショートパンツとニーソックス。
小柄な体でオレを見上げていた。
「…ここ、私の事務所だけど…」
そ、そうだ!! ナッちゃんの苗字…たしかマグロだったんだ…!! すっかり忘れてたぜ……
「き、今日は面接に応じて頂き、ありがとうございます…。あ、この花束!? いやぁこう見えてもオレ、花束が好物なんですよ!! うはは!!」
ナッちゃんの嫌いなものワースト3に入っている『花束』。なんとかしないと。
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