プロポーズは1秒でも早く

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富士山の頂上に着いたら、ちょうど御来光が始まったところだった。 綺麗な朝日に包まれながら、光の先を見つめていると、一点の黒い塊が見える。 何だろう?……と思った途端、点が線になり、そして翼となってオレに襲いかかってきた。 ……ぎゃぁぁぁ、鳥?! いや、鷹?! って、おかしいだろぉぉ!!……と叫びながら逃げ出すと、何かに滑ってハデに転んだ。 イテテと上半身を起こしながら、足もとにある、滑った原因を確認する。 ……ナスだった。 いや、正しくは『焼きナス』だ。 「そうそう、焼きナスはよく滑るんだよ……」  ……って、オイ。 なんだコレ? 最近会得した『一人ボケツッコミ』を、誰かに笑ってもらう事もなく、後ろから楽しげな演奏が聞こえてきた。 振り返ると何やら怪しげな仮装集団が、楽器をならし、唄を歌いながら列を成してやってくる。 ……え? 富士山頂だよな? ここ。 あきらかに場違いな集団に戸惑う。 が、いきなりその中の屈強な男に担ぎ上げられた。 ……な! 何をするんですか!? 「思い立ったが吉日!! 即、行動!」 はあ?……わけがわかりませんよぉぉ!! 下ろして!! と泣きそうになったと同時に、なぜかそばに泊めてあった船に、全員で乗り込んだ。 ……ふね?  現実を受け入れられないまま、船は空へと浮かび始める。 ……ぎゃー! 冗談じゃない! 降ろしてくれぇ!! 「お前、好いたおなごがおるだろう?」 船のへりで助けを叫んでいると、腹のつき出た半裸のデブに言い寄られた。 「生涯大事にすべし」 ……い、言われなくても大事にするから、降ろしてくれ!! 「由々しき事態じゃ!!」 今度は、頭頂部の異様に長い爺さんが叫ぶ。 みんなが注目する中、小槌を持った小振りのデブが飛んでもない事を口走った。 「この船、七人乗りだぞ……」 ここまで来ると、もうメンバーを数えなくてもすぐに理解できた。 今、この船には『七人+オレ』が乗っている。……って、マジか。 「この船、何だか沈んでるぞぅ?」 のんきに船首で釣りをしていたこれまたデブが、振り返りつつ報告してくる。 ……明らかにデブの比率が高いからだろ!! 誰か痩せろよ!! どうしようも無い事に嘆いていると、もうお迎えが来るんじゃないか?というほどヨボヨボした爺さんが、紅一点の綺麗なお姉さんに縋り付いた。
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